前回は飼育環境についてでしたが、今回はご飯について書いていきたいと思います。
1. 粗繊維を食べさよう!
まずご存知かと思いますが、うさぎは草食動物であり主食は“草”となります。
しかし、来院される方の多くがペレットや野菜を与えていれば大丈夫というような誤った知識で飼育されているのが現状です。
ここでうさぎを飼育するうえで絶対に覚えていて欲しいのは、“うさぎの主食は牧草”という事です。
では、牧草とペレット、野菜の何が違うのかと言いますと、それは繊維量にあります。
牧草の繊維の割合が35%前後なのに対し、多くのペレットは15%前後、野菜は数%と圧倒的に牧草が上回っています。
人間は肉や魚などのタンパク質、脂肪などをメインに体を構成・維持していますが、うさぎは繊維によって体が作られています。
うさぎのお腹は大部分が盲腸で占められ、盲腸に送り込まれた牧草などの繊維分は腸内細菌によって発酵、分解され、吸収されていきます。
そのため、健康なうさぎは余分な脂肪がなく、腸に張りがあり、お腹の大部分に盲腸が展開しています。
しかし、市販のペレットやおやつなどタンパク質や脂肪の多い食事を主食にしていると肥満状態になり、元来繊維を発酵し有効活用する機能(主に盲腸)が低下していきます。
人間がファーストフードやポテトチップス、ケーキなどで育ったようなものと同じです。
歯など他の病気を伴わなければ、この食事でも生きてはいけますが、少しずつ腸の機能が低下していく為、当然のことながら病気になりやすかったり、食欲にムラが出たりし始めます。
一旦このような状態になると、今まで美味しいものや口にしやすいものを食べてきた影響により食事の変更が難しく、寿命の短縮といった事態を招いてしまいます。
病院では触診によりうさぎの腸の状態を車のエンジンで表現しています。
トラックを動かすためにはそのトラックの大きさに適したエンジンが必要です。
しかし、トラックに乗用車のエンジンを積んだ状態だと少しは走るかもしれませんが徐々にパワーを失い、止まってしまいます。
これをうさぎで言うと、「このうさぎの体型やお腹の大きさからしてこれくらいの腸のボリューム(トラックのエンジン)は欲しいが今は50%くらい(乗用車のエンジン)しかない」という感じになります。
元々、しっかりとした腸(トラックのエンジン)を持っていて、何らかの原因で食欲が落ち、うんちも小さくなったうさぎの場合、治療に対する反応は良いのですが、ずっと腸のボリュームが50%位(乗用車のエンジン)で何となく生活してきて、脂肪も多いうさぎですと治療への反応が悪く、中々立ち直らず、次第に弱っていってしまうこともしばしばあります。
では、実際にどのようなご飯をどう与えればいいのか。
何でも食べてくれる子であれば、牧草99%以上与え、ペレットは細かく言えば体重の3%程度(例:体重が1.5kgの子ならペレットは45程度)がうさぎにとって最適な食事となります。
牧草が主体ですが、ペレットを少量与えることでタンパク質やミネラル成分等も補えるので適切な量を与えれば、体格がしっかりしたり、毛艶が良くなる可能性があります。
では、牧草の種類やお勧めのペレットについて書いていきます。
2. おすすめの牧草
ペットショップなどでイタリアンライグラスやオーツヘイ、アルファルファなど様々な種類の牧草が売られていますが、チモシーがうさぎに最も適した牧草となります。
チモシーは低カルシウム、高繊維でほとんどが乾燥した状態で販売されており、収穫方法により一番刈り、二番刈り、三番刈りがあります。
一番刈り:生育して一番最初に収穫された牧草で最も栄養分が高く、風味があるが牧草自体が硬くハード。幼少期より慣れていないと食べないことがある。チモシー一番刈りを食べてくれる子であれば他の牧草を与える必要はなく、一番刈りと少しのペレットを与えれば問題ありません。
二番刈り:一番刈りを収穫後、生えてきたものを収穫した牧草で、一番刈りより栄養分が劣るがソフトで食べやすく、大きくなってからでも導入しやすい。
三番刈り:二番刈りを収穫後、生えてきたものを収穫した牧草だがあまり販売されていない。最も栄養成分が劣るが、ソフトで非常に食べやすい。どうしてもチモシーを食べない子に導入として試すのに良い。
他、アメリカ産、カナダ産、北海道産など産地の違いがあるが、風味が若干違うくらいで品質的にはほとんど一緒のものになります。
牧草をよく食べてくれる子であればインターネットやペットショップで一度に5kgを買った方が安く手に入りますが、新鮮な状態のものしか食べてくれない子の場合は500gでチャックがついたチモシーを購入された方が良いと思います。
イタリアンライグラスやオーツヘイは良い牧草ではありますが、チモシーと比べ香りが良く、嗜好性が高いのでこれらの牧草に慣れてしまうとチモシーを食べなくなってしまうことがあります。
また、時々品切れを起こし入手できなることがあり、入手できない際にチモシーを与えても美味しい牧草に慣れてしまっているが故、口にしてくれない可能性もあるのでイタリアンライグラスやオーツヘイはチモシー一番刈りを食べない子の2、3番目の選択肢として考えたほうがいいでしょう。
他の牧草がイネ科なのに対し、アルファルファはマメ科に分類され、タンパク質とカルシウムが多く含まれているので、成長期のうさぎには与えるのは問題ないのですが、大人のうさぎに与えると肥満や結石の原因になるので控えたることをお勧めします。
3. おすすめのペレット
牧草が主食ですのでしっかりと牧草を食べているこの場合、ペレットは体重の3%程で十分な量となります。
中にはペレットを山盛りにあげる方もいますが、それだとペレットだけでお腹いっぱいになってしまい、繊維量が全然足りないので、あくまでもペレットは補助食品のような位置づけで考えてください。
繊維量が多いものほど良いペレットになりますが、先ほども述べましたが売られているペレットの中には繊維量が15%前後のものもあります。
そこで繊維量が多いペレットの調べ方ですが、ペレットの袋の裏に成分表示があり、その項目の一つに粗繊維というのがあります。
この粗繊維が20%以上のペレットをお勧めします。
「牧草をしっかり食べいればペレットはなんでもいいのでは?」といった意見もありますが、個人的には食べてくれるのであればなるべく繊維量が多いものの方が良いのではと考えています。
この粗繊維で探してみると20%以上のペレットは限られてきます。
さらにハニーやパイナップルなどの”風味”がついたフードも嗜好性は良いのですが、美味しくこれしか口にしなくなってしまうので風味がついたペレットは避けましょう。
以下、お勧めのペレットをご紹介します。
①チモシーの恵(粗繊維:23.0~27.0%以下)
主にチモシーを細かく刻み、捻って棒状にしてあるので、歯が悪い子や牧草の食いつきが悪い子でも比較的食べてくれる。
②チモシーのきわみ(緑)(粗繊維:23.0~27.0%以下)
チモシーの恵とほぼ同じだがきわみはグルテンフリー。
刻んだ牧草を棒状にするに当たりつなぎが必要だが、きわみはつなぎにグルテンを使用していない。
多くのうさぎは問題ないが、中にはグルテンを摂取すると腸の動きが悪くなるうさぎもいるためそういった子にはグルテンフリーのきわみがお勧め。
③うさぎのきわみ(ピンク)(粗繊維:20.0~24.0%以下)
多くの栄養成分が含まれているのでタンパク質、脂質ともに恵、きわみ(緑)よりも多い。グルテンフリー。
きわみ(緑)は牧草よりのペレット、きわみ(ピンク)はペレットより。
牧草 > 恵 > きわみ(緑) > きわみ(ピンク)といったイメージ。
恵またはきわみ(緑)を食べてくれるならきわみ(ピンク)よりもそちらを与えた方が太りにくい。
④バニーセレクション(メンテナンス)(粗繊維:22.0%以下)
チモシーの恵、きわみシリーズ以外でお勧めのバニーセレクションシリーズ。通称バニセレ。
メンテナンスの他、グロース、シニアやスーパーシニア、ネザーランドドワーフ専用(通称ネザ専)、ロップイヤー専用などが販売されているがグロース以外はどれも似たり寄ったり。
グロースは成長期のうさぎやエネルギーが必要な妊娠うさぎ用でタンパク質がやや多めで粗繊維が18%以下。
なのでバニセレで考えているならメンテナンス、シニア、スーパーシニア、ネザ専、ロップイヤー専用のどれかがお勧め。
⑤ラビットプラス(粗繊維:22.0~27.0%以下)
最近、このラビットプラスを与える飼い主様が増えている印象で比較的嗜好性も良く、繊維量も22.0~27.0%なのでお勧め。
グロース、メンテナンス、ダイエットライト、シニアサポートの4種類販売されているが大人のうさぎにはグロース以外を与えましょう。
⑥ラビットプライムプラス(粗繊維量:22.0~27.0%以下)
前述のラビットプラスの改良版のフード。
黒いパッケージで一際目を引く存在ですが、見た目に負けじと繊維量20%以上で良いペレットとなっています。
メンテナンス、ハイファイバー、シニア・サポートのいずれかがお勧め。
⑦OXBOW
エッセンシャル アダルトラビットフード(繊維量:25~29%)
ラビットフードの中では最高レベルの粗繊維量のOXBOW。
OXBOWは他のメーカーと比べ健康に配慮したフードを作っており、このフードもアルファルファは使わずチモシーをベースとして作られたもの。
健康に配慮しているので他フードと比較しやや嗜好性は落ちますが、食べてくれるのであればとても良いフードになります。
以上、牧草とペレットについて記載しましたが、基本的にはこの2種類で生活していけるので、ドライフルーツやおやつ類は基本的にあげない方がその子のタメでもあります。
おやつを食べる姿は可愛いですが、それが原因で太り、治療に反応しなくなると考えると…恐ろしいですね。
どうしてもあげたい場合はひとつまみ程度のブロッコリーの芯や小松菜、セロリなどを週に1回程度にしておきましょう。