新型コロナウイルスで企業のテレワークが推奨されている現在、獣医師はテレワークが可能なのか考えてみました。
獣医師の仕事で一般的に知られているのは動物病院で犬猫や小動物の診察をする小動物獣医師ですが、他にも国や都道府県、市区町村の保健所や検疫、食肉衛生検査所など主に公衆衛生に関する仕事をする公務員獣医師、牛、豚、鶏などの診察をする産業動物獣医師、製薬会社やペットフード会社などの一般企業で研究や開発、営業をする獣医師などあまり知られていませんが多岐に亘ります。
私は現在、動物病院に勤務していますが、3月中旬頃から来院数や手術件数が減っており、やはり外出自粛が動物病院にも影響を与えているのではと感じています。
では、獣医師がテレワークすることは可能なのか。
結論から述べますと難しいと思います。
小動物獣医師は耳にした情報にはなりますが、海外では来院後、オーナーと会わずにペットだけを預かり、症状などは電話を通じて聞き、治療後、お返しするというドライブスルー方式がとられている所もあるとのことですが、基本的には病院へ出勤しなければ診察・治療をすることは難しくなります。
また、公務員獣医師の中でも食肉衛生検査所の獣医師は世の中に流通する牛肉や豚肉、鶏肉などを1頭1頭、1羽1羽、病気にかかっていないか検査しているのでこの食肉衛生検査所の獣医師がテレワークになった場合、検査ができなくなり世の中からお肉がなくなるという事態に陥ります。
その結果、農家さんも牛や豚などを出荷できなくなり(適正な月齢で出荷しないと生肉の価格が低下する為)、経営困難に陥る可能性が高まります。
牛肉や豚肉になる前の生体の状態の牛、豚を診察、治療する獣医師も一昔前と比べたら農家さんもある程度、予防や治療ができるようになってはいますが、やはり使用する薬の選定や静脈注射、手術、難産など獣医師が実際に立ち会わないとできないこともまだまだ多くあります。
保健所、検疫などの獣医師も一時的に働く獣医師の数を減らすことは可能ですが、公衆衛生の予防の観点から全ての公務員獣医師がテレワークをするのは難しいでしょう。
製薬会社やペットフードメーカーに勤める獣医師はある程度融通が利くと思いますが、製薬会社で研究、開発に携わっている方は病気の蔓延を抑えるお仕事でもあり、またテレワークでは研究や開発ができません。
このように獣医師という職業は医療や公衆衛生に関わる仕事であるため、テレワークをしたくてもしづらい職業ではあります。
ペットを飼っていない方からすると「このご時世、動物病院は閉めればいいのに」と思っている方もいるかもしれませんが、ペットを飼われている方からすれば、ペットの調子が悪くなった際に診てもらえる動物病院がなければ不安で仕方ありません。
また、この時期は犬の予防注射である狂犬病の注射を打つタイミングであり、動物病院を閉めることで注射が打てなくなり(例年、役場や公園で行われている狂犬病の集合注射は今年は新型コロナウイルスの影響で行われない為)、感染症の予防ができず、狂犬病が日本に入ってきてしまう可能性も否定はできないため閉めることはできませんので、ご理解いただければ幸いです。