1. うさぎの歯の構造
うさぎの歯は人間と同様、健康な生活を送る上で重要な身体の構造の一つとなります。
出生の前後で乳歯が生え、生後5週齢までに永久歯が生え始め、永久歯は切歯(前歯)は上下で6本、臼歯(奥歯)は上下で22本の合計28本生えています。
あまり知られていませんが切歯が上下2本ずつの合計4本と思われている方が多いのですが、実は上顎の切歯の裏に小さい切歯が2本あるので正確には切歯は合計6本存在します。
また犬猫で見られる犬歯はうさぎでは存在しないので切歯と臼歯の間には隙間があります。
ウサギ目であるうさぎの歯は生涯伸び続けますが、ハムスターやラットなどの齧歯類は切歯は伸び続けますが、臼歯は伸び続けることがありません。
うさぎの切歯の成長速度は10~12cm/年で上顎切歯(2mm/週)より下顎切歯(2.4mm/週)の方が伸びる速度が速いという報告があります。
切歯は文字通り”切る歯”なので牧草を切る役割をし、臼歯は”臼のようにすり潰す歯”なので切られた牧草をすり潰す役割がそれぞれあり、チモシーをしっかり食べてくれるうさぎであれば歯が擦り減るので、歯牙疾患(歯の病気)になることはありませんが、不正咬合(噛み合わせが悪い状態)の子やチモシーの食べがいまいちで、ペレット主体や柔らかい牧草を好む子は擦り減らず伸びてしまい、結果として舌や頬を傷つけてしまいます。
2. 不正咬合とは?
うさぎを飼育されている方なら「歯牙疾患」という言葉は一度は耳にしたことがあると思いますが、簡単な言葉にすると不正咬合=歯牙疾患=歯の病気ということになります。
先ほども記載しましたが、うさぎの歯は生涯伸び続けるので、不正咬合やチモシーを食べない子の場合は擦り減らずに伸び続け、舌や頬を傷つけ、食欲低下につながります。
では、擦り減らない歯はどのように伸びるのかを図を使って説明します。
![](https://blog-mareeba.com/wp-content/uploads/2020/12/IMG_3615-scaled.jpg)
上の図のように臼歯は上顎と下顎で伸び方が異なり、上顎の臼歯は外側が頬側に伸び、下顎の臼歯は内側が舌側に向かって伸びるので、結果として上顎は頬を、下顎は舌を傷つけます。
ただ、たまに上顎が内側に伸びたり、下顎が外側に伸び頬を傷つけることもあります。
切歯の伸び方は図には記載していませんが、ご想像通り、上顎切歯は下側に、下顎切歯は上側に向かって伸びます。
ものすごく切歯が伸びている子の場合は左右にクルンっと巻いてしまって「よくこの状態で食べていたな」という子も見かけます。
不正咬合になると口が痛いので食欲低下につながったり、ペレットは食べるが牧草は食べない、口をモゴモゴする仕草、口周りや前足(口周りのグルーミングにより)がヨダレで濡れる、毛が抜けるといった症状が見られます。
一度、不正咬合になってしまうと基本的には生涯定期的な歯のカットが必要となり、稀に歯のカットをしていくうちに噛み合わせが矯正され、カットが必要なくなる子もいますが、過度な期待はせず、付き合っていくしかないと開き直ってしまった方が心に余裕ができます。
カットの頻度としては大体1~1ヶ月半に1回の割合ですが、その子よって伸びる速度が違いますので、初めは2週間程で歯の伸び具合を再チェックし、徐々にその頻度を伸ばし、最終的にその子にあったカットの頻度を把握していく必要があります。
慣れてくると、「牧草は食べるけど少し口をモゴモゴする」とほんの少しの変化に気づけるようになり、実際に口の中をチェックすると舌や頬を傷つける程ではないが微妙に歯が当たっているといった”ちょうどいいタイミング”でカットしに来院される方もいます。
3. どうして不正咬合になるの?
不正咬合になる理由としては基本的には生まれつき噛み合わせが悪い場合が多いのですが、中には生活していくうちに不正咬合になってしまう子もいます。
後者の場合の要因には牧草を食べなくなったことによるものや、ケージなど硬い物を噛んでしまい不正咬合になることが挙げられます。
ケージを噛んでいる子を飼育されている方はかじり木を入れたり、それでも噛む場合はケージの内側をチモシーボードや木製のフェンス、段ボールで四方を覆い、ケージを噛めないようにする必要があります。
牧草を食べなくなってしまった子はペレット主体の食事や柔らかい牧草を与えていること多く、美味しく食べやすいご飯を知ってしまったので再びチモシー1番刈りを食べさせるのは難しくなります。
そのような子の場合は与えるペレットにしてもなるべく粗繊維率が高いものを与えるようにし、牧草もイタリアンライグラスやチモシー3番刈りなどではなく、可能ならばチモシー1番刈りや2番刈りをあげて下さい。
うさぎは一度美味しいペレットや柔らかく食べやすい牧草を知ってしまうと、中々元通りの食生活に戻すことは難しいので、少しばかり心を鬼にして食べてくれるか見守りましょう。
最後に不正咬合の子にお勧めの粗繊維率が高いペレットやケージを噛むのを防止するフェンスなどをご紹介します。
4. 不正咬合のうさぎにお勧めのフード・グッズ
チモシーの恵、極シリーズの中で一番牧草に近いのがチモシーの恵になり、次は緑のパッケージのきわみで、ピンク色のパッケージのきわみはどちらかというとフードよりのペレットになります。
お次はケージを噛むのを防止するためのグッズのご紹介。